今回は、帰国子女について考えたいと思います。彼ら彼女たち
の多くは、父親の海外赴任により、2年から5年程度海外で生活した後、

父親の海外勤務終了と共に帰国した子どもたちです。そして帰国後、
海外で身につけた英語力の維持を目的に、私たちのような英会話

スクールを訪ねてきます。一概に帰国子女といってもケースは様々です。
まず、英語圏での滞在だったのかそうでなかったのか。英語圏だった場合は、

現地校に行ったのか、日本人学校へ通ったのか。英語圏以外の場合は、
現地のインターナショナル校に行ったのか、日本人学校に行ったのか。

英語圏以外の国で、インターナショナル校や日本人学校の選択肢がある
にもかかわらず、現地のローカル校に通う例は少ないようです。

 次に大切な要素は、何歳で海外に行き何歳で帰国したのかという年齢の問題です。
この年齢の問題は、子どもたちへの影響に関しては、滞在期間の長短よりもより重要です。

一般的には低年齢であればあるほど、年長の子供たちよりも現地での生活への
溶け込みは容易であり、しかも言葉の問題も含めて、現地での生活への導入期間は、

短期間で完了します。しかしそれは帰国の際、低年齢であればあるほど、
せっかく身につけた外国語を、早く忘れることをも意味します。

言葉に関しては、読み書きができる能力を身につけた年齢になって
帰国したか否かが、言語運用能力の維持のためには、大きな要素を占めます。

子どもが小学1・2年生で帰国してきた場合は、読み書きの訓練を継続して、
その能力を身につける必要があります。読み書き能力の習得なしには、

帰国後、日本語に囲まれる子供たちは、日本語の方が英語よりも楽になるので、
英語を習得したのと同じスピードで英語を忘れていきます。

普通、スクールでは週1回のレッスンですから、読み書き能力の習得には、
どうしてもお家で親子で一緒に本を読んだりする家庭の協力が必要となります。

ですから6・7歳以下のまだ読み書きの能力が十分に付いていない子ども
たちは、帰国後半年間、何のフォローもしないとしたら、彼らの外国語

運用能力は極端に低下します。

 また、言葉の問題ばかりクローズアップされますが、帰国子女の精神的
なケアーやフォローも大切です。彼らは幼くして異なる言語・文化・価値観

の中で自分を対応させる為に苦労し、その苦労を乗り越えてやっと現地の
生活に溶け込んだと思ったら、数年後ふたたび帰国により、母国といえども

異なる文化や価値観を持つ社会や人々とうまくやっていかなければならないのです。
しかも前回の外国においてよりも、今回の自国においての方が、より困難な

場合もあります。中には周囲の理解が得られないで、外国と自国で2度
傷つく子供たちもいます。自己主張をする彼らは精神的にタフだと見られがち

ですが、多くは繊細で傷つきやすい子供たちでもあるのです。「隠れ子女」
というような、胸が痛くなるような言葉があるのをご存知ですか。

 しかしこれからの日本において彼らの存在は、大変重要ではないでしょうか。
彼らが日本での学校生活を嫌い、外国での生活を懐かしむそのような日本社会

ではなく、彼らの経験や能力が充分に生かせる社会に日本が成熟することが、
これからの日本社会にとって大切だと思います。自分たちと異なるということで

それを排除するのではなく、異なったものを抱えているがゆえに、自分たちが
より豊かだと感じる感性、それが大切ではないでしょうか。どんなに美味しくても、

同じメニューでは飽きてしまいます。日本料理だけでなく、中華料理もフランス料理も
イタリアや料理もインド料理もタイ料理もインドネシア料理もロシア料理も、

そしてアフリカ料理も気軽に味わえる土地、それが豊かで良い土地にに決まっています。
食べ物ではこんなに簡単な道理でも、様々な人々がその違いを互いに尊重しながら

ひとつの土地で隣人として生きることは、それ程簡単ではないようです。
違いを強調するよりも、人間として共感しあえるものを見出す努力が大切

ではないでしょうか。