ウフンのお話
朝、仕事に行くためにいつものように川縁の小道を歩いていました。 その日は「ユニークな英会話スクール」というタイトルで、ある雑誌社 の取材を受けることになっていました。それで、22年前になぜ バイリンガルセンターを設立したのかとか、効果的な外国語学習法 とはどんなものかとか、いろいろ話す内容を考えながら歩いて いました。それが運の尽きでした。不注意にも犬のフンを踏んで しまったのです。「ああ、やってしまった。今日はウンがないな。」 と思いながら、いやな気持ちのまま草叢に靴底を何度も擦り付け ていました。するとそこに白髪交じりの長い髪の仙人の様な容貌 をしたおじいさんが通りかかり、「旦那さん、旦那さん、ウンを 落とすなんて勿体ない、勿体ない。」と言うではありませんか。 何故かそのおじいさんの声には不思議な説得性があり、私は フンを落とすのを止めてしまいました。そしてそのウンとフンの 付いた靴を、今でも秘密の場所に隠し持っているのです。