2013年度からの新入生から実施する高校の学習指導要綱の改定案で
「英語の授業は英語で行うのが基本」と明記され、そのことに関して、
はたして本当に実施できるのだろうか、また効果はあるのだろうか、
あるいは授業についていけない生徒が続出して、益々多くの英語
嫌いな生徒を作るのではないのか等等、様々な議論が行なわれて
います。私たちのスクールでは1990年の設立当初から、当たり
前なこととして英語の授業は英語で行っているので、時代がやっと
私たちに追いついてきたかという印象ですが、同時にこれから
学校教育が抱えるであろう様々な問題も見えてきます。まず語学
教育に関して、基本的な認識として理解して欲しいことは、言葉は
学ぶだけではけっして習得できず、学んだ言葉を運用することに
よってのみ習得できるということです。言語の習得は、ある意味
では繰り返し練習して弾けるようになる楽器の演奏や、スポーツ
の技量の向上の過程と一面よく似ています。言語の運用能力も、
まさにそのようにして繰り返し練習して獲得していくのですが、
そのときに自己を言葉で表現したい、自分の気持ちや考えを相手に
伝えたい、或いはわかって欲しい、そして相手の気持ちも理解
したい、そのような動機が無いと言葉を習得することはできません。
また言葉(この場合は英語)でコミュニケーションすることは
楽しいという経験を持てないと、そのような動機も育ちません。
子供から大人まで様々な年齢の多くの生徒がいる私たちのスクールで、
英語をコミュニケーションの手段として用いることができる生徒
たちが育つのは、英語を学ぶことが義務ではなく、生徒たちが
自ら学びにくる民間のスクールだからです。ですから高校でも
「コミュニケーションの手段として英語を習得したい」と望む
生徒だけが英語を学ぶ選択制にしたら、きっと効果が上がる
と思います。しかし、残念なことにそれは難しいようです。